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砂漠への前章・つれあい

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オーベルジュ「キャラバン」のボス・アハメッド氏との交渉。

砂漠へ行く。
車は使わず歩きのみで。
砂だけじゃなくていろんな景色の変化がほしい。
その場所場所に住むひとたちと交流したい。

そんなかんじの要望をつたえて、10日間かけてぐるりと歩き回る道のりを(大体)決める。

何がどこでどのくらいかかるのか、はっきりしないし別に知りたいとも思わないけれど、これはお友達価格なのだよと強調されたこの「ごく個人的ツアー」のお値段は、ナイショ。でも帰宅後、知り合いにちょろっとその話をしたときには「相場の半額くらい」と言われたので、ほんとうにお友達価格にしてくれていたのだなぁと後から実感。

さてそのお値段に含まれるものは、

仏語堪能、数少ない「政府認定」ガイド氏・シディ
代々ラクダ使いの家系です、2頭のラクダ担当・ハミドゥ
まだやんちゃさの残る、ガイド見習い兼料理人・ハッジ
ラクダ2頭
食料もろもろ10日分

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さすがに複数の旅行エージェントと取引のあるアハメッド氏の専属ガイド、シディ(写真左)は経験豊富で国家試験もパスした「しっかりとした」ガイド。
スケジュールにもきびしく、旅中「軍人シディ」というあだながついたくらい。とくに日頃の生活に時間の束縛がすくないわたしたち二人には、はじめのうちは「朝6時起床」とか、「休憩5分間」とかのリズムになかなか慣れなかった。でもそのうちにそれが心地よくなってくるから不思議。

わたしたちが希望した道のりを10日間で歩破するには、一日平均で5時間ほど歩かないといけなかった。井戸のある場所や眠るのに適当な場所にたどりつくために、時にはキツイと思える道のりをひたすら歩くことになったことも。のんびり砂漠旅行、というよりは何かの修行に来ているのではと思い込みそうな、ちょっとハードな旅程でもあった。
最終日のお昼、もう最終目的地まで2時間ほどを残すのみとなった時点ではじめて、10日間で歩破した距離を教えてもらった。200キロ強。歩きにくい砂、登り、下り、砂利道。永遠に続くかと思われた道のりをほぼ終えて、「軍人」シディに「君の歩き方はとても賢くて力強かった」とねぎらいのことばをかけられると、何だかやり遂げたという満足感がひしひしと体の奥からわきあがってきたものである。






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ラクダ担当のハミドゥ。
ちょっと内気で仏語もあまり話さないこともあり、はじめはあまり会話もなかった彼。でも旅を進めていくにつれて、「ハミドゥ、らくだはどこ行った?」(休憩中や夜はらくだを放牧させるのでどこかへ行ってしまう)とか、「ハミドゥ、またピーナツ全部食べたの!」(彼がピーナツ大好きですぐたべてしまう)とか、一日に何度もそんな冗談を言っているわたしたちにすこしずつ心をゆるしていったらしい彼。旅のおわりに「今までで一番たのしい旅だった」と目をウルウルさせて言ってくれたときには、こちらもぐっときてしまった。


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料理人・ハッジ。(写真左の左側)
「ガイドとラクダ担当と料理人のうちで、一番仕事がキツイのは料理人」とシディのいう通り、彼の仕事量は一番多く、また働き者の彼。料理場としてのテント立て、料理準備、給仕、片づけ。テントはお昼休憩と夜と、一日2回立てる。
しかもわたしたちと一緒に歩くのだ。この3人は(というかこちらの人は皆)ものすごく健脚であることはもちろんなのけれど、それでもこのハッジは若さもあってか、パワーがありあまっている。歩いているうちにいなくなったと思ったら、大きなメロンをかかえて戻ってきて、それを抱えて2時間くらいまた歩き続ける。おしゃべりも絶好調。日本やフランスのおばちゃま方も、彼のおしゃべりパワーには絶対かなわないであろう、本当に賑やかでかわいい、ハタチの男の子。

ちなみに彼らが普段話している言葉はモーリタニアの地方語「ハサニャ」。アラブ語が90パーセント、ベルベル語が10パーセントくらいに混じっている言葉らしい。もちろんわたしたちには分からない。なのでそんな一日中のおしゃべりが音楽のように耳を通り過ぎていく。暑さと歩きに疲れているときには「もう静かにして!」と思ってしまう彼らのおしゃべり。でも夜になって、焚き火のかげがゆらゆら揺れる背中をながめつつ一服しているときには「なんてノスタルジックなんだろう」と思ってしまう彼らのおしゃべり。砂漠の旅の大きな魅力のひとつでもあるのだ。


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アカシアの若木の向こうにしずむ夕日。
横でハミドゥがまたピーナツを食べている。「ハミドゥ、もうピーナツないよ!」



quelques photos: Francois-Xavier PREVOT
# by chevani | 2008-03-15 22:29 |